- Working Paper ID
- WP003
- Working Paper 名
- Artificial Intelligence は産学連携の夢を見るか ~特許データによる価値創出の分析~
- 作成年月
- 2019年7月
- 著者 (所属・作成時)
- 草地 慎太郎(早稲田大学大学院 経営管理研究科修了)
- 牧 兼充(早稲田大学大学院 経営管理研究科准教授)
- 著作権保持者
- 早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター・科学技術とアントレプレナーシップ研究部会
- 概要
- 本研究は日本国内のAI分野における特許の分析を通じて、企業の研究開発における産学連携の有用性を示すことを目的としている。本研究では特にコンピュータ・サイエンス分野の中でより成熟度の低いAIの領域とコンピュータ・サイエンス領域全体の比較を行うことで先端科学領域における産学連携の寄与の度合いの違いを示すことを目指す。AI領域は歴史のある研究分野であるが、通信インフラやコンピューティング能力といった外部環境の進化とディープラーニングの実用化という技術的ブレイクスルーを通じて基礎、応用の両面で進化の著しい先端領域となっている。産学連携による価値創出の促進については、米国で1980年に成立したバイ・ドール法により特許による経済的インセンティブを付与することで成功したことが知られている。本邦においても、1998年に大学等技術移転法(TLO法)が、続いて1999年にバイ・ドール法に範をとった産業活力特別措置法第30条が定められたことにより政策的な支援の取り組みが開始された。本研究では産学連携の実施状況とその価値の創出の度合いを分析するために国内の特許データを利用した。特許データのソースとしては一般財団法人知的財産研究教育財団知的財産研究所の提供する「IIPパテントデータベース」を用いた。分析は1999年以降国内のコンピュータ・サイエンス分野で登録された150,237件の登録済み特許とその内数としての864件の人工知能分野の登録済み特許を抽出して実施した。出願者、発明者、権利者のいずれかに企業と大学の両方が登録されている特許を産学連携の特許として説明変数に設定し、被引用数を特許の質を示す被説明変数として設定した上で重回帰分析による分析を行った。結果、コンピュータ・サイエンス分野全体と人工知能分野では、産学連携による特許の価値への影響が異なることが分かった。コンピュータ・サイエンス分野の特許全体を対象にした分析では産学連携は特許の被引用数に対して有意な影響がみられなかった。一方で人工知能分野においては有意なプラスの影響が確認された。この結果は先端科学の領域において企業が研究開発を行う上では、より成熟度の高い領域に比べて大学の知を活用することの重要性が高まる結果を示している。更に、産学連携特許を登録情報の出願者、発明者、権利者のどの項目に大学・企業が含まれているかにより分類することで、産学連携の連携パターンとみなし、分類ごとに再度重回帰分析を行ったところ、パターンにより有意な結果が出るものとそうでないものがあることが分かった。具体的には大学が権利を持つ特許の組み合わせでは有意なプラスの結果が確認できなかった。このことは、産学連携の枠組みにおいて、連携の枠組みにより価値への影響が異なることを示しており、現在の大学主導のモデルと異なり企業主導型の連携に価値が高まる可能性があることを示唆している。
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