研究プロジェクト・プロポーザル
早稲田ビジネススクール
牧兼充
1. 背景
アメリカ合衆国カルフォルニア州サンディエゴ地域は、1980年代以降、軍事産業からサイエンス産業の街へと急速に発展し、地域に根ざしたイノベーションの成功事例の一つとして広く認識されている。サンディエゴにおける産業構造の変革においては、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)が、世界的に知られるCONNECTプログラムを立ち上げるなど、地域イノベーションの中核として大きな役割を果たしてきた。 サンディエゴは、大学が中心となって人工的に作られた地域イノベーションの事例であり、シリコンバレーと比較しても、日本にとって 参考にしやすい。UC San Diegoが地域のエコシステムとどのような形で相互に共進化してきたかは、ケース・スタディを中心に多数研究が行われている。
本研究では、UC San Diegoに関連する多様なデータセットを活用し、同大学が中心的な役割を果たしてきた産学連携の実体、ベンチャー創出の現状、地域のエコシステムの関わりなどを定量的に分析し、そのメカニズムの検証のために、インタビュー等の 定性研究を行う。これにより、サンディエゴにおける地域イノベーションの成功の要因について、日本のみならず世界の地域イノベーション拠点が活用できる知見の創出を目指す。
また本研究プロジェクトでは、地域イノベーション促進のための大学の経営に関する政策的インプリケーションを探る。それと同時に、ベンチャーキャピタルや企業などに役立つ産学連携、大学発ベンチャー育成に係るビジネスへのインプリケーションを探る。こうした取り組みにより、政府および企業に対して最新の知見を提供すると共に、サンディエゴのエコシステムに興味を持つ日本企業・政府機関との橋渡しの役割を担う。
本研究は日本におけるサンディエゴのエコシステム研究のプラットフォームとしての役割を担う。関係する他の研究グループ等と積極的に連携し、情報共有の場として位置付ける。
2. メンバー
[研究メンバー]
- 牧 兼充 (研究代表: 早稲田ビジネススクール 准教授 / カリフォルニア大学サンディエゴ校 ビジネススクール 客員助教授・J-STEPディレクター)
- 長内 厚 (早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授)
- 角山 正典 (Lab to Market Japan)
- 黒河 昭雄 (東京大学公共政策大学院 客員研究員)
- 齋藤 裕美 (千葉大学大学院 社会科学研究院 准教授)
- 櫻井 直樹 (タナベリサーチラボラトリーズ アメリカ社 CEO)
- 鈴木 寛 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科兼総合政策学部 教授/東京大学公共政策 大学院 教授)
- 隅藏 康一 (政策研究大学院大学 教授)
- 高田 仁 (九州大学大学院経済学研究院産業マネジメント専攻 教授)
- 高橋 陽二 (岐阜聖徳学園大学経済情報研究科 准教授)
- 田路 則子 (法政大学経営学部 教授)
- 根井 寿規 (政策研究大学院大学 教授)
- 中泉 拓也 (関東学院大学経済学部経済学科 教授)
- 原 泰史 (政策研究大学院大学 専門職)
- 林 公子 (カリフォルニア大学サンディエゴ校 プロジェクトサイエンティスト)
- 樋原 伸彦 (早稲田大学 大学院経営管理研究科 准教授)
- 福井 文威 (政策研究大学院大学 助教授)
- 福嶋 路 (東北大学大学院経済学研究科 教授)
- 三善 由幸 (独立行政法人経済産業研究所 コンサルティングフェロー)
[スタッフ]
- 菅井 内音 (リサーチ・アシスタント: 慶應義塾大学理工学部)
- 福留 祐太 (リサーチ・アシスタント: 慶應義塾大学大学院理工学研究科)
- Kunaal Mithal (リサーチ・アシスタント: 慶應義塾大学環境情報学部)
-
長尾 壽子 (事務局)
- 花房 明子 (事務局)
3. 研究テーマ
- UC San Diegoにおける領域別産学連携共著論文の時系列変化
- UC San Diegoにおける領域別特許・意匠・商標出願状況の時系列変化
- UC San DiegoにおけるStar Scientistの同定
- UC San Diegoにおける学部別の財務状況とベンチャー創出数の変化
- UC San Diegoの留学生の推移とベンチャー企業のグローバル性の関係
- UC San Diegoにおける大学の制度変更と大学発ベンチャー創出数の推移
- サンディエゴ地域におけるアンカー企業の同定と時系列変化
- 地域イノベーションにおけるアンカー企業の役割
- 地域イノベーションにおけるアンカー・パーソンの役割
- 地域イノベーションにおけるアンカー企業、アンカー・パーソンならびにStar Scientist の相互作用メカニズム
- 地域イノベーションにおける地域内研究機関の役割
- 地域イノベーションにおける大学、アンカー企業、研究機関の人材の流動性
- サンディエゴのエコシステムを活用したボーン・グローバル企業の創出と成長に関する動向と世界における位置付け
4.主な活動
- UC San Diegoの産学連携、ベンチャー、財務に関するデータセットの整備
- UC San Diegoの研究者来日時の研究ワークショップの開催
- 地域イノベーションと産学連携に関する先行研究の整理・共有
- 地域イノベーションと産学連携に関する研究論文の執筆・発表
- 産学連携による研究会の開催 / 共同研究
- UC San Diegoとの大学との国際共同研究の推進
5. 予測される貢献
- 地域イノベーションのメカニズムに関する把握
- 地域イノベーションにおける大学の役割 の検証、改善点の提案
- 分野別の産学連携のパフォーマンスに関する検証、改善点の提案
- 国際機関を含めた政策担当者への知見の提供
- 起業家予備軍及び企業のアライアンス担当者への戦略の示唆
6. 想定する連携機関 (予定)
- Japan – Science, Technology and Entrepreneurship Program (J-STEP), Rady School of Management, UC San Diego
- SING San Diego
- Lab to Market Japan
7. マイルストーン
[フェーズI: 2017年1月〜2018年3月]
- データセットの構築
- 仮説の再構築
- カリフォルニア大学サンディエゴ校との連携体制の構築
- 地域イノベーション及び大学の役割に関する先行研究整理・レビューペーパーの投稿
- サンディエゴ地域におけるプレ・インタビュー
[フェーズII: 2018年4月〜2019年3月]
- データの分析
- サンディエゴ地域におけるインタビュー
- 研究成果のとりまとめ・発表