[ STE Relay Column : Narratives 214]
池田 真梨「夏よりも熱い『Lab to Market 2023夏』」

池田 真梨 / SOMPOホールディングス株式会社

[プロフィール]栃木県出身。2011年SOMPOひまわり生命保険株式会社入社。神奈川営業部神奈川支社、営業企画部ダイレクトマーケティング室を経験したのち、事業企画部にてヘルスケアアプリの企画運用や新規サービスの開発を担当。シリコンバレーのスタートアップサービスの日本ローカライズ展開を実施。2021年よりSOMPOホールディングスへ出向しスマートシティ・コミュニティ起点でのシニア向け新規事業に従事。シンガポール国立大学で学ぶSOMPO企業内大学「SOMPO Global University」の第4期生(16年度)。経済産業省&JETRO主催イノベーター育成プロジェクト「始動」シリコンバレー派遣第5期生(19年度)。大企業挑戦者支援プログラムの運営や事業会社の協業支援等実施。新規事業をスケールさせるためにビジネスモデルをきちんと学びたいと思い、2022年早稲田ビジネススクール(WBS)夜間主総合コースに入学。樋原ゼミ所属。家族構成は夫と娘1人(1歳)。趣味はサウナと珈琲。


はじめに
私は3年前に仕事でハーバード大学の研究室の30年以上に渡って研究がされていた技術を当社のサービスとして日本で商業化し展開するといった経験をしました。PoCはうまくいき、事業化したものの、その後はなかなかうまくいきませんでした。どうしたら良かったのだろうかと今でも悩み、そのことがWBS入学のきっかけにもなりました。L2Mのシラバスを読んだ時、まさにL2Mは当時の経験そのものだ!何がだめだったのか、どうしたらうまくいったのか知ることができるのではないか?!と衝撃が走りました。
しかし、L2Mは負荷が高いとの噂を聞き、受講自体をかなり悩みました。なぜなら私は昨年の夏Qに出産し4月に育休から復職したため、仕事・学校・育児と3足の草鞋で忙殺される日々だったからです。予想以上に保育園で病気をもらってくる子供の看護をしながら、フルタイムで働き、負荷の高いL2Mは受講ができるのだろうか、、チームメンバーに迷惑をかけてしまうのではないか、、と不安でいっぱいでした。でもやりたいという熱意を家族に相談し、受講を決めました。結論としては素敵なチームメンバーや家族に支えられ、2ヶ月間なんとか走り切ることができました。WBS生活も1年半近くが過ぎようとしていますが、私にとって最も大変で最も思い入れのある講義となり、受講して本当に良かったと思っています。授業での学びや得たものについて、3つの視点から述べたいと思います。

1.正解(に近いもの)の見つけ方
初回の対面授業でシミュレーションゲームをしたのですが、変化の激しい環境での市場調査は役に立たないことが多いという気づきがありました。特に仮説検証を何度も繰り返す中で、失敗から学び、ある程度の推測から何度も小さく試し続けることが重要であると感じました。
実務では新規事業開発をしているのですが、正解がわからないといった経験が多々あります。特に意思決定は過去の成功経験やなんとなくの感覚で決めるのではなく、理由付けや根拠をベースにして「こうではないか」といった仮説を立てることで次の検証ができるのだと、失敗の知識・ノウハウを蓄積こそが次に活かす際に非常に効果的なのだと講義から気づきがありました。エフェクチュエーションでいう許容可能範囲を決めその中で繰り返し検証を続けることは正解を見つける、または成功するための手法あることを学びました。まさに牧先生のおっしゃっている仮説を立てて因果関係の推論を行っていくこと、つまり「科学的思考法」を習得することで、正解のわからない新規事業や協業ビジネスモデルの成功に近づくのではないかと感じました。
授業で学んだことは翌週小さなことでも実務に取り入れてみる、をこの講義では毎週実践していきました。L2Mでは明日実務に活かせることを学ぶことができ、まさに理論と実践の融合である内容だと思います。

2.科学的思考法の実践
昨年TOM、春QにEBMを受講したのですが、TOMは科学的思考法の基礎編、EBMはアカデミアな視点でのアプローチ、そしてL2Mはそれらの応用、実践編であると思います。まさにホップ・ステップ・ジャンプ。選択した技術の商業化についてチームメンバーと3人でひたすら仮説を立てて棄却、仮説を立てて棄却を何度も何度も続けます。修行のように試練のようにただひたすら毎日技術の有望市場について考える日々。寝ても覚めても考えることも多く、夢にも出てくることも・・・。仮説を立てながらチームメンバー3人で手分けをしたり、揃って参加したりしながら、研究者2名と計34の企業や団体にインタビューを続けました。3人それぞれに専門分野があり、意見が異なることも多々あり、発散と収束を繰り返し、迷走した時期もありました。最終的には多くのインタビューを通して、当初の仮説とは異なって見えてきたものがあり、それって私たちにしかできない大発見だね!と最後は3人で納得する最終発表ができたと自負しています。私のWBS生活の中で最も熱い2ヶ月だったなと感じています。本当に素敵なチームメンバーに恵まれ、感謝の気持ちでいっぱいです!谷さん、速水さん、本当にありがとうございました!このメンバーでやれてよかったです!

 
<チームメンバーと>

3.アントレプレナー・エコシステム
この講義の魅力は科学的思考法の実践だけではありません。牧先生の長年培ってこられた経験と人脈を駆使したエコシステムそのものの一員になれることです。研究者とつながることができるだけでなく、早稲田大学のスタートアップ・エコシステムやディープ・テック投資、産学連携について学び、当事者の皆さまとつながることができました。またなかなか自分だけでは知り合うことのできない豪華な最終審査員のみなさまに、2ヶ月の成果をしっかりフィードバックいただくことができ、交流する機会をいただきました。これは今後この領域に関わって仕事をしたい人の今後の資産になると思います。L2Mは牧先生の創り上げたアントレプレナー・エコシステムを体感できる、そしてその輪の中に入ることができるチャンスがある講義だと思います。私は今後も研究室の技術を商業化するような仕事に関わりたいと強く思っています。私はこの講義を通して、確実に人脈もキャリアの幅も広がりました。今後も何かしらの繋がりとgive(恩返し)ができたらいいなと思っています。受講を迷われている方で今こちらのコラムを読まれている方はぜひ講義の受講をおすすめします!

 

<最終プレゼンの様子>

おわりに
講義は本当に大変でしたが、その分やりがいと達成感、チームメンバーとの絆や一体感を感じることができました。チームメンバーの谷さん、速水さん、牧先生、三木先生、ゲストスピーカーのみなさま、授業をサポートくださったTAのナンちゃん、ドンちゃん、サポートくださった東さん、後藤さん、メンターのみなさま、ラーニングコミュニティのクラスメンバーのみなさま、最後に私を支えてくれた家族、本当にありがとうございました!!

 


次回の更新は9月1日(金)に行います。