[ STE Relay Column : Narratives 208]
倉田 佳祐 「EBM2023:自分の学び方を変える場であり、まだ何も成し遂げていないことに気が付く場」

倉田 佳祐 / 早稲田大学経営管理研究科

[プロフィール]神奈川県出身。大学卒業後、製薬会社等で医薬品の臨床開発に従事。現在は、医療系スタートアップにてバーティカルSaaSの事業開発担当者として従事。
2023年4月より早稲田大学大学院 経営管理研究科(夜間主総合)に入学。

本コラムはEBM(エビデンス・ベースド・マネジメント) 2023について受講者の目線でお伝えするコラムです。WBSでも最も負荷の高い授業と言われる授業をM1の春クオーターに何故履修したのか、もしかしたら牧先生が担当する最後のEBMの授業について個人の体験、感想をまとめたものになります。

■EBM(エビデンス・ベースド・マネジメント)受講のきっかけ
この授業を受講するきっかけとなったのは、牧先生から学びたいというWBSの受験理由まで遡ります。
実務から離れた場所で学びの場として、MBAに絞らずに広くリサーチをする中で、WBSの牧先生のゼミでは「経営学をサイエンスの一分野として捉えて、組織やプロジェクトにおけるイノベーションを創発するための様々な手法について学ぶ」という方針を知り、ここだ!と思いWBSへの進学を決意し、出願理由にも上記について記載した程です。
その後、ご縁がありWBSに無事入学出来たわけですが、実は当初はM1でEBMを履修する予定はありませんでした。正確に言えばM1で必修含めて基本的なことを学び、選択科目のEBMはM2での履修を考えていました。
ところが、EBMのシラバスを開いた私は衝撃の事実を知ることに・・

『授業担当である牧兼充は2024年3月よりサバティカルを取得予定であるため、牧兼充が担当する授業で学びたい方は2023年度中のの履修を推奨する。』牧先生のゼミは私がM2になるときには受け入れがないということを入学後に知ることになったのです・・

またシラバスの説明には以下のような記載もありました。

『この授業は、本来であれば博士課程レベルの内容をMBAの学生に提供するものであり、負荷の高い授業であることが予測されるので、そのことを了解した者のみ履修して欲しい。WBSにおいて、もっとも負荷の高い授業であると自負している。この予習には英語が得意な者であれば各回3時間程度、英語が苦手な者であればそれ以上の時間を割くことが必要となる。』

[注意]
この授業は原則として「対面形式」にて行います。止むを得ない事情で欠席した方には、オンデマンドビデオを後日見れるようにすることを検討しています。なお、この授業はWBSの中でも比較的レベルの高い授業であると考えられるので、その旨留意した上で履修を決めて下さい。

まだWBSの授業負荷もわからない状態で履修登録するのはかなり勇気が必要でした。結果として、M2で履修できないのであれば飛び込むしかないと覚悟を決めた自分を今では褒めてあげたいと思います。

■EBM授業を受けてみて
M1の早い段階で自身の学び方の見直しアップデートやマインドが変わったので良かったと感じています。
履修希望者に対しては最初の授業前の課題や受講すべきかどうか躊躇させるような工夫がシラバス以外にもあり、いい意味で覚悟を決めた熱量の高い受講者が集まった授業であったと思います。
事前の周知の通り、英語の定量論文を毎週読み、ワード一枚のサマリーを提出し、発表担当の週はPPTにまとめるという取り組みがありましたが、今年の履修生には去年までと違う大きな武器がありました。
その武器が「ChatGPT」(生成系AI)です。利用の可否について議論するなどではなく、AIツール活用に関する方針にて留意点が明示された上で積極的な活用が推奨されていました。
授業のコミュニケーションツールとして利用していたDiscordで「chatgpt」チャネルもあり、授業の内容をChatGPTでまとめて共有してくれる受講生、牧先生自身も授業のスライド作成に活用されているなど利用前提で授業は進んでいました。
私自身はこの授業で初めてChatGPTを触ることになるのですが、毎週の論文について、ChatGPTに論文の情報をプロンプトとして入力し、ChatGPT作の論文のサマリーを大まかに理解した上で、気になる箇所を読み込む、ChatGPTの回答が怪しい部分を見つけて読み直すなど効率的に学習できましたし、今ではWBSの授業を進める際になくてはならない相棒となっています。(ちなみにこのコラムもChatGPTと一緒に作成しています。笑)
また事前課題については「いかに時間をかけないか大切である」と牧先生からコメントが何度かあったのも印象的で、論文については時間をかけて精読することでなく、要点をつかみ次の議論に繋げるという練習の場であったと感じています。
その他、毎回の授業の最初に「先週学んだことで、この1週間、実務で活かしたことはありますか?」と振り返る場があり、学んだことから次のアクションに繋げる意思決定について意識するような仕組みが上記に限らず授業を通して随所に盛り込まれていました。
学んだことを活かすために、意思決定し、アクションに繋げるということ実はあまり出来ていないことで、普段から意識するように自身の学び方やマインドが変わったと思います。

■EBM授業を終えて
授業を終えた今、授業に対する満足度は高いものの、「自分がまだ何も成し遂げていないな」を同時に感じたが授業を終えた今の感想です。
授業を通して、合計で25本の論文、4本のケースが取り扱われました。1日に6本の英語論文について履修者から発表があった週もありました。牧先生から補足はあるものの、先生から各論文の解釈を学ぶという場でありません。発表の担当者はTAやチームのサポートを受けながら自身でまとめ発表をし、その内容について履修者同士で質疑応答をする。この結果、自分の力で定量論文を読む力と、科学的な思考法を身に付けられるようになったとある程度の達成感に浸っていたのは自分だけではないはずです。
そんな受講者心理を見据えてかの一工夫も最後の授業でありました。EBMの授業で取り扱った全ての論文についてどのような論文であったか振り返る時間が設けられたのです。これにより聞いていたつもりの論文であっても結構忘れている、論文のまとめ方など必要な情報がすぐに取り出せないなど気付きと、真の理解にはなっていないと痛感させられるのです。知識のインプット、学び方のアップデートだけではなく、更にその先を見据えて行動せよの牧先生からメッセージだったと感じています。フィールド実験のデザイン・コンテストがEBMの最終課題であることも、学ぶだけでなく自らが仕掛ける方になる側になるようにというメッセージだと解釈しています。
授業を通じて、WBSやその後のキャリアに必要な学び方のアップデートや小さくても良いので即行動!と意識付けがされました。ただし、ここで満足せずに次に自分達がやることは何かを考え続け、仕掛け続け、それが次の誰かの学びとなるようなアウトプットになる!がこの授業を履修した我々へのやるべきことなのかなと思っています。

最後に、牧先生、EBMの授業の履修者、チームメンバーの皆様、TAの皆様、最終課題のメンターの皆様とありがとうございました!

 


次回の更新は7月25日(火)に行います。