[ STE Relay Column : Narratives 187]
徳橋 和将「『イノベーション研究のための定量分析』と非常勤講師」

徳橋 和将/早稲田大学大学院経営管理研究科修了

[プロフィール]日立製作所の研究者(博士(工学))。技術のビジネス化やマネジメントに関する理解を深めるため、WBSの門戸を叩く。牧先生の授業やその情熱に圧倒されて牧ゼミで学び、修了。現在は企業で働きながら、早稲田大学の招聘研究員としても活動。また、後輩の修論の支援や、牧先生に機会を頂いて他大学院での特別講師に従事していましたら、WBSの非常勤講師になりました(今回の話)。

「吉岡さんと二人で授業やってみない?」

突如、牧先生よりご連絡が来ました。
WBS授業「イノベーション研究のための定量分析」をご担当されている吉岡先生がお忙しく、本授業のコーディネーターである牧先生から、私にお声をかけていただきました。大変光栄なことだと思いつつも、学生として過去に受講していた身からすれば、正直、恐れ多い。。
もう少し話を聞いてみると、

「講義パートは動画があるから、授業ではそれを見てもらえばよい。」
→なるほど。(結局、講義はリアルタイムでも実施することになります)
「演習の授業だからQ&A対応がメインになるよ。難しい質問は学生と一緒に考えればよい。この授業は運転免許みたいなもの。使い方を教えるのであって、車の仕組みを教えるわけではないよ。」
→なるほど、たしかに!

 以上のような経緯で(実際にはもう少しまじめなやり取りがありました)、色々と不安もありましたが、これまで大変お世話になった牧先生、そして吉岡先生に少しでもご恩を返すタイミングだと思い、そして、やはりとても光栄なことですので、講師をお引き受けする覚悟を決めました。

 とは言ったものの、授業で扱う統計ソフトStataや、職業柄研究活動には慣れているのですが、私、そこまで実証分析に詳しかったっけ?そして、なにより私自身在学時に、頻繁に色々と吉岡先生に質問しておりました。そして、当時先生にはとても丁寧にご教授いただきました。ということで、受け持つからには自分も的確に質問に答えられるようになりたいし、ならなければいけない、しっかりと理解しようと決意しました。それからは、参考書を10冊ぐらい買い込み、なんだか難しい統計のwebサイトも調べながら、在学時よりもとても勉強しました。本来、詳しい人が講師の依頼を受けると思うのですが、すみません、決まってから努力しました。。ただ、おかげさまで、授業までのこの修行期間がとても良い勉強の機会となり,そして実際に授業を行うことで、私自身とても成長できました。

 さて、ここで、このコラムの本来の目的でもありますが、来年の受講生に向けても、少しWBS授業「イノベーション研究のための定量分析」の紹介をしておきます。まず、本授業は専門科目であり、選択必修コアの「企業データ分析」履修者または同等の知識をお持ちの方を対象としています。ただ、基本的な所も扱いますので、モチベーション高く、頑張れる方なら問題ありません。内容としては、牧先生の授業で扱う論文のような、実証的なイノベーション研究で用いられる分析手法を、統計解析ソフトStataによる演習を通して学びます(分析手法の例としては、グループ間の差の比較と検定、回帰分析、パネルデータ分析など)。要するに、所謂データサイエンス観点で原因と結果の因果関係を発見していくやり方を学びます。そして、これらの学びを活用して修士の研究を進めていきたい方に向けた授業です!
 また、この授業は設計者の吉岡先生により、非常に合理的な授業構成になっています。基本的には講義パートと演習パートに分かれ、オンデマンド動画もあります。また今年は、状況に応じて、ハイフレックス、オンライン形式で授業を行いました。その中で、本授業の強みは、演習とリアルタイムのQ&Aです。多くの時間をここに充てています。グループワーク等を行う授業ではありませんし、既に統計分析やプログラミングに長けた方も受講されると思いますので、ライブ講義、講義・演習動画、配布資料、書籍等でご自身に適した方法で学習いただき、不明点はQ&Aで補完していきます。したがって、学びを深めるためにも、アクティブラーニングの精神で、不明点は聞きまくり、また、サンプルデータだけではなく、簡単でも良いので、修論研究も踏まえた独自のデータセットを作ってどんどん分析を進めていくことを推奨しています。

 なお、今年の授業では、吉岡先生と私に加えて、牧ゼミOBの吉田さんと平野さんにもTAとしてご参加いただき(お二人ともPh.D.ホルダーです)、非常に充実したQ&A支援体制となりました。そして、何よりも、ビジネススクールでは比較的マイナーな内容、かつ正直難しめの授業であるにも関わらず、想定よりも多くの方々に受講いただき、無事完了することができました。未熟な講義で恐縮ですが、受講いただいた方にとって、学びが多かったならば幸いです。ぜひ修論を頑張って最後まで走り抜けてください!また、改めてデータセットを作り、分析してみると不明点も出てくると思いますので、ご質問があればご連絡ください。

 最後に、私を講師として受け入れていただいた懐の深いWBSの先生方、そして、ご推薦いただいた牧先生、吉岡先生に、この場をお借りして感謝申し上げます。また、牧ゼミや、WBSの同期、焼き肉を一緒に食べてくれる友人達からは、起業したり、進学したり、転職したり、海外で働いたりと様々にご活躍される話を聞き、大変多くの刺激を受けました!
どうもありがとうございました。


次回の更新は12月2日(金)に行います。