[ STE Relay Column : Narratives 155]
大森 実「イノベーションは全ての人たちのためのもの Innovation is for everyone」

大森 実 / 早稲田大学経営管理研究科

[プロフィール] 東京都出身。幼稚園から小学校まで父の海外赴任について行きヨーロッパ、東アジアに滞在。早稲田大学高等学院を卒業後、早稲田大学政治経済学部へ進学。大学卒業後は、PwCコンサルティング(金融サービス業界担当)⇨ 世界銀行(ビジネスアナリスト)⇨ Amazon(サプライチェーンマネジメント)で勤務。Amazonでは、AI・機械学習を用いた需要予測によるSCM最適化とフリーキャッシュフロー最大化に携わっている。

□授業に期待していたこと
世界を見渡すと、デジタル化されたビジネスモデルが百花繚乱です。GAFAと呼ばれるGoogle、Apple、Facebook、Amazonをはじめとして、ウーバー・テクノロジーズやエア・ビー・アンド・ビー等のシェアリング・エコノミーと呼ばれるビジネスモデル。私は現在Amazonに勤務しており、技術とオペレーションのマネジメント(TOM)を履修したきっかけの一つはこれらのビジネスモデルについてより掘り下げて考えてみたいと思ったことでした。

イノベーションとは、物事の「新機軸」「新結合」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」を創造する行為のこと。一般には新しい技術の発明を指すという意味で使われることが多い印象ですが、広義に捉えると新しいアイデアから新たな価値を創造し、人・組織・社会などに大きな変革をもたらす事を意味し、技術者のためだけの概念ではなくあらゆる人たちの役に立つテーマであると、牧先生の授業を受けた今、実感しています。

□授業からの学び
牧先生のTOMの授業では、イノベーションの様々な分類やフレームワークを扱います。革新的イノベーション、斬新的イノベーション、既存のコンポーネントを新しい方法で結び付けるための既存システムの再構成であるアーキテクチャイノベーション、技術の中核的設計概念だけを変化させるモジュラーイノベーションなどです。牧先生はビジネスケースを上手に活用して「抽象」と「具体」を自在に行き来し、私たちが柔軟にアイデアを生む出すための基礎体力を培う場を提供してくれました。ビジネスパーソンとして、具体的思考と抽象的思考を使いこなせれば、現状分析やアイデア創出も思いのまま。ぜひ、今後も日頃から実践を続けて行きたいと考えています。

また、牧先生の授業スタイルは、Inclusive leadershipを体現したものでした。緻密に設計されたストーリーを、とてつもない熱量で毎週届けて下さった牧先生。裏側からサポートして下さったTAの方々。先生とTAの思いを受け止めしっかり応えた受講生たち。Learning Communityをつくる、というのは受講生ひとりひとりの貢献が積み重なりできるもの。相互の学びあいを通じて、良いコミュニティを形成できたのは授業に関わった全ての人のおかげです。

□最後に
この授業をひと言で表現するなら、「CEOとしての在り方を爆速で体験する授業」だと思います。イノベーションを提供価値とする企業の、スタートアップ期から世間で広く知られるようになるまでの一連のプロセスを爆速で体験できました。スタートアップ期は限られたリソースでビジネスをどう迅速に展開するかといった課題に直面し、会社が大きくなれば、世間からの期待や法規制・倫理の観点とビジネス上の利益とのバランスの両立に直面する。結局のところ、経営において唯一の正解など存在せず、自分なりに考え抜き、経営者としてその時々においてベストな選択を納得してすることが大切なのだと思います。

牧先生の「学生の学びに対するコミットメントの高さ」は本当に素晴らしく、受講生は長く続くLearning Communityと10年後、20年後も役に立つ思考のフレームワークを手に入れることができます。TOMの授業を履修されることをぜひ検討されることを皆さんにもお勧めしたいです。


次回の更新は12月24日(金)に行います。