[ STE Relay Column : Narratives 154 ]
脇 信子「TOMを終えて~ Life is a series of choices ~」

脇 信子 / 早稲田大学経営管理研究科

[プロフィール]兵庫県西宮市出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。在学中1年交換留学(University of Birmingham, UK)。購買、生産管理などSCM(サプライチェーン・マネジメント)の仕事を経て2011年フォルクスワーゲングループジャパン入社。メンバーの3分の1が外国籍のダイバーシティ溢れる技術部門でダイレクターアシスタントとして部署の予算管理、組織変更、オフィス移転といったオフィス運営のサポートを行っている。2021年4月早稲田大学大学院経営管理研究科(夜間主総合)入学。趣味はドライブ、スキー、楽器演奏など。

 分かれ目は、一本のメールだった。

「牧さんの授業はなんだかスゴイんだ」という風の噂を耳にし、履修したいとは思っていたが、牧さんは履修生が増えすぎて授業のクオリティが落ちるのが嫌で、敢えて人気の必修と同じ時間にぶつけて履修生を減らすという作戦をとっていた。
 私はその作戦にまんまとひっかかり、まだ右も左もわからない春学期中は必修優先、なにやら難しそうな牧さんの授業は来年取ろうと思っていたのだが・・・。
夏休み、秋学期の履修を決める際、既に春に履修済みの「技術・オペレーションのマネジメント」というこの授業がどうしても気になり、聴講するか迷いに迷っていた。(科目名が同じでも先生によって中身が違う。そして、中身が違うが2度目は正式履修出来ない。)スケジュールとにらめっこしながら、秋Qキツイなあ、と聴講のお伺いメールを下書きに入れたまま2~3週間が経過。いよいよそろそろ履修を決める際、やっぱりこの授業に参加せずにM1を終えるのはどう考えても勿体ない!と、えいっと下書きを送信した。
 牧さんからはすぐとても丁寧な返信がきたが、こんな状況なので教室のキャパ次第ではもしかしたら聴講の方は遠隔参加をお願いするかもしれないとの事。
 やる気満々で聴講するのに、一人家からオンラインでハイフレックス受講する姿を思い浮かべると、その場合は別にもういいんだけどなーとちょっぴりがっかりしながらも、一旦出した言葉を引っ込める訳にもいかず、「ハイフレックスのオンライン参加は未だ苦手で、教室参加出来る事を願います」と書き添えて返信した。

 その念が通じたのか、対面での授業がスタート。「コロナ前の授業で良かったものがなくなることを阻止したいと思う人へ」という今年のコンセプトは、対面授業の良さを全面に押し出したもの。牧さんの、授業への溢れんばかりのパッションは、こちらも出来る限りのコミットメントで返さねばと自然と思わせるものがあり、生徒間のinteractiveな学びも回を追う毎に加速。準備と復習は確かに大変だったが、心から楽しみながら乗り切る事が出来た。
 (まあ、私は評価関係無しの聴講生特権を存分に活かし、授業で気軽に手をあげて言いたい事を発言し、お気楽なコメントをTakeawayに残していただけなのだが・・・。)

 「この授業では敢えて居心地の悪い空間を作るように努めている」と先生は繰り返しおっしゃるのだが、なぜか私にとっては最初から最後まで居心地の良いクラスだった。
授業中の飲食OKというアメリカンなスタイル、机無しで椅子だけを円形に並べた自由な空間作り、活発なdiscussion、ケースの順番に伏線があり、次の授業でそれを回収して謎が解けた時の爽快感、ドローンが飛ぶ教室、過去の履修者の方々との交流、Embodied Leadership を学ぼうと、留学生のImmyを囲んで踊ったウガンダ・ダンス・・・。履修生達もPeer Effectで一体感が増し、最後の授業は先生への皆の感謝で溢れ、頑張ると人に伝わる、人の琴線に触れる事が出来るというのを、身をもって体感した。

 とはいえ、絶対履修した方が良いと手放しで褒め称えて押し売りする気は無い。この授業は、授業自体が実験の連続で、一見無駄な作業もアジャイル的に盛り込まれている為、効率的に必要な事だけを学ぼうとするクールな人にはおそらく合わない。私自身は、もともとMBAは無駄な事をするために来ているという認識で(こんな事を言ったら怒られそうだが・・・)、むしろ無駄から学べる事が沢山あるという気分で参加していたので何も苦にならなかったが、合理的な人には合わないかもしれない。ただ、一つ言えるのは、牧さんがいつも授業で繰り返されていた、「今日は昨日までやれなかったことだけをやってみたい人へ」は、心からオススメ出来る授業だ。

 来年の1月~3月は、休職してスイスのザンクト・ガレンというドイツ語圏の小さな街に短期で交換留学させていただける事になった。びっちり埋まったスケジュール表には、まずは雪山のトレッキング(Team building)から始めるのでダウンと防水の靴を持ってこいと書いてあり、ちょっとTOM(今回の授業)と似た雰囲気を感じている。日本より更にワカいクラスメートに囲まれ、やっていけるかしらと一抹の不安も抱えつつ、Giveしたら返ってくる、という事をいつも心に留め、Give & Giveの精神で、周りとPeer Effectを築きながら楽しんで乗り切りたい。

 そして、今一度、実り多き秋Qを一緒に過ごさせて頂いたクラスメートの皆様、溢れるパッションで皆を導いてくださった牧先生、きっととても大変だったTAの西田わこさん、Rola、Merck、貴重なお時間を割いて来て下さったゲストスピーカーの皆様、過去の履修生の皆様、ウガンダ・ダンスで素敵な時間を下さったImmyに、心から御礼を申し上げます。


次回の更新は12月17日(金)に行います。