[ STE Relay Column : Narratives 149 ]
川崎 太樹「今日は昨日まできなかったことだけをやりたい教員」

川崎 太樹 / 早稲田大学大学院経営管理研究科

[プロフィール]1980年滋賀県長浜市生まれ。大学卒業後、2004年に岩谷産業株式会社へ入社し、産業機械の営業に従事。2014年には企業派遣でシリコンバレー(Berkeley, CA)へ1年間の留学、2016年~2019年の3年間はアメリカ(Houston, TX)に駐在を経験。駐在時代は営業のために北中南米の各国を飛び回る生活をしていました。帰国後、さらなる成長を求めて早稲田大学ビジネススクールに入学しました。現在は大阪在住です。金曜日から週末にかけて上京してゼミと授業を受ける日々です。スポーツ観戦、お笑い、サウナ、キャンプが大好きです。

 

はじめに

こんにちは。夜間主総合M2の川﨑と申します。この4月から牧ゼミに所属しており、牧ゼミ4期生として活動しています。私は2020年4月に早稲田大学ビジネスクールに入学すると同時に、大阪へ転勤になりました。しかも、それまでの営業から心機一転、人事の仕事をせよということになり、同じ会社内での転職状態で全く新しい仕事を始めることになりました。異動と時を同じく、新型コロナウイルスが猛威を振るい始めました。新しい仕事と新型コロナウイルス感染症対策に追われ仕事に忙殺される日々、とてもビジネススクールに通えるような状況ではないと判断して休学を決意しました。休学を決めてから数カ月は忙しさのあまり全くWBSのことを考えたことはありませんでした。仕事がやっとひと段落した8月にふとWBSのことを思い出し、それまで封印していたWasedaアカウントのメールを見てみると、秋学期は新型コロナウイルスの影響を考慮して「平日は対面、土曜はオンラインの授業」と書いてあるではありませんか。これなら大阪からでも授業に出られると、秋学期からの復学を決断し、現在に至ります。

 

牧さんとの出会い

牧さんとの出会いは2020年秋クォーターでの授業「技術・オペレーションのマネジメント」でした。実はこの授業、私のWBSでの記念すべき最初の授業でした。期待と不安が入り混じった複雑な心境で指定されたZoomにアクセスすると、何やら軽快な音楽がかかっているではありませんか。この音楽のおかげで期待と不安はどちらも最高潮に達しました。その音楽はStanford d.schoolのPlaylistであることを後から牧さんから教えてもらい、今でもこのPlaylistは私のお気に入りの一つです。さて、いよいよ最初の授業が始まりました。最初はオンライン授業の勝手もわからず、また、他の受講者が発言していることへの理解も追いつかず、緊張もあって何の発言もせずに授業があっという間に過ぎ去ったことを覚えています。この授業ではデザイン思考のワークショップやケーススタディ、ゲストを招いての講義など様々な形態で、また流行りのツールをたくさん使って、最新のテクノロジーやイノベーション事例を学んでいきました。牧さんが学生の意見を取り入れて、毎回授業を改善されていることには「こんなに熱心な教員がいるのか」と驚かされました。教員が学生の学びを最大化させようと惜しみなく労力を費やす、学生も授業に強力にコミットする、緊張感が保たれた非常に良い授業だと感じました。今思えば、牧ゼミ4期生で一緒のゼミ長・辻ちゃんやしんちゃん、全日から夜間主ゼミにも参加している下ちゃん(当時TA)と出会えたのもこの授業でした。あの頃は一緒のゼミになるなんて微塵も思ってなかったけど、何か運命的な繋がりをもたらしてくれた授業だったなと感じています。

 

牧ゼミの活動

秋学期のプロジェクト研究エッセンス(プレゼミ)を経てゼミ選びの季節になりました。私が春学期を休学していた影響で、ゼミ選びは2020年度末のタイミング、しかしながら実際にゼミを履修するのは2022年度からというイレギュラーな状況に陥っていました(その後の協議で2021年秋学期からのゼミ履修となりました)。秋学期の授業を履修していく中で今までの人生ではずっと避けてきた「科学技術」というものに興味を持ち始めており、今まで自分が経験してきたことの真逆にあるこの分野を学んでみたいという思いが強くなっていたため、牧ゼミへの興味は高いものがありました。しかしながら、他にも興味があるゼミもあり、なかなか希望を決めきることができませんでした。また、前述した私のイレギュラーな状況が選考のネックになるのではないかと不安になり、どのゼミに希望を出すか悩みに悩んでいました。このような状況で、誰よりも親身に相談に乗ってくれた教員が牧さんでした。牧さん自身が大学事務局に直接話をしてくださったり、色々とアドバイスをいただいたり、助けていただきました。最後はゼミで何を学ぶのかというよりも、この人に付いていこうという思いで牧ゼミに希望を出しました。選考の結果はゼミ生6名が一発で決定するという、劇的な展開でした。ここでも牧さんやゼミの同期との運命的な繋がりを感じました。こうして始まったゼミでは(2021年春学期は聴講扱い、秋学期から正規履修)、シミュレーションゲームをしたり、本を輪読したり、議論したり、ゲストやゼミOBの皆さんからお話を聞いたり、ワークショップで物を作ったり、逆に物を破壊したり、レジュメを書いたり、お悔やみ記事を書いたり、健康的なお弁当を食べたり、みんなで笑ったり、多様な活動を通じて、様々な学びを得ています。春学期は通常の授業(科学技術とアントレプレナーシップ、通称:STE)で定量論文をたくさん読むこともあって、ゼミでは基礎を固めたり、ゼミメンバーとの相互理解を深めたり、発想力を磨いたり、そんな時間が多い活動だったと思います。春学期の終わりに牧さんに実施いただいたStanford d.school仕込みのワークショップにおいて、この半年でゼミ生のみんなに牧ゼミのNormが浸透していることを実感し、自分自身も牧イズムを習得してパワーアップできているかなと思っています。秋学期はいよいよ修士論文の執筆へ向けた活動が始まります。時間とタスクに追われる日々が始まりますが、牧さんの熱血指導のもと、ゼミメンバー全員で助け合って乗り切りたいと思います。本当に教員とメンバーに恵まれたことへの感謝の気持ちでいっぱいです。このメンバーが一緒に学ぶ場があと半年しかないのかと思うと既に寂しさもありますが、残りの半年のゼミ活動を最高に有意義な時間にすべく全力で取り組みます。

 

最後に

この約1年間のお付き合いを経て、牧さんについて思うことは「根拠に基づいた最新の科学技術を教える先生ではあるけれど、科学技術とは真逆にあろう「人間らしさ」が溢れる教員」だということです。たまに人間らしすぎてゼミ生一同が困惑することもあります(笑)。最近、授業や普段の会話の中でよく「AI時代でも残る仕事はどんな仕事か」とか「MBAはAI時代でも必要か」ということを話すことがあります。確かに、科目によってはAIの進化によって学ぶ必要が無くなるものも出てくると思います。それによって不要になる教員もいるかもしれません。ただ、牧さんのように「相手の考えや想いを受け入れること」、「高い目標に自らの意思でチャレンジし続けること」、「新しい興味を持ち続けること」、このようなことができる先生はAI時代のこれからも必要とされる存在であると思います。「今日は昨日まできなかったことだけをやりたい人」、牧さんはこれを体現して常に進化し続けている教員であると思います。今後もAIには真似できないその熱い想いでご指導していただくことを楽しみにしています!


次回の更新は10月15日(金)に行います。