奥住 佳子 / 早稲田大学大学院経営管理研究科 / 花王株式会社
■はじめに
2人の子供と暮らしつつ、働きながら、学生生活を送っていると、周りの方から、大変なのではないかと心配していただきます。最近は、子育てしながら働いていらっしゃる方も多いと思うので、そこはあまり珍しくはないと思いますが、そこに早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS)で学生をしている点が少しまわりとは異なるかもしれないです。なので、その点を書いてみることにしました。
私がWBSで学ぶことを選んだ理由は3つあります。1つ目は、タイミングです。上の子と下の子の中学受験の狭間の2年間、このタイミングが2年間の大学院生活を送るのにベストではないかと思ったからです。2つ目は、アップデートです。人生100年時代そしてVUCAの時代に20代までの学びのままでは足りないのではないかと思い、学びをアップデートしてこれからの人生を充実したものにしたいと思ったからです。3つ目は、peer effectです。これまでにNPO法人 J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)や三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)のビジネススクールに企業派遣していただき、そこで出会った異業種の仲間との絆とそこから生まれる新たな活動に触発されたことが挙げられます。こうした理由で、今現在、母とビジネスパーソンと学生の3足のわらじを履く日々を送っています。
■多様性だけでなく受容性も
私がWBSの1年目で受けたオンライン講義の恩恵は非常に大きく、この環境がなかったら途中でドロップしていたか、2年での卒業をあきらめていたかもしれません。大学の設備が整い(私の通う早稲田大学は、授業で使用するすべての教室の空調設備を1人当たり1時間に30立方メートルの換気ができるように、7億5千万円もかけて入れ替えました。)、コロナが落ち着きを取り戻しつつある中、大学の講義も対面が基本となりました。その一方で、WBSではハイフレックス型(学生が同じ内容の授業を、オンラインでも対面でも受講できる)講義が提供できるよう講義室の設備を更新してくださったりもしていていて、2021年春クォーターに受講した科学技術とアントレプレナーシップ(STE)はまさにハイフレックス設備を導入した馬蹄形講義室で行われました。さらに、オンラインで入る学生のために、教室の真ん中にMeeting Owlというかわいいふくろうのカメラを置いて、教室の全景を遠隔から見れるようにしてくださり、だれが発表しているかわかるようになっています。この講義は対面で受講したのですが、普段はオンラインで参加することが多く、その際、音声はマイクで拾えるのですが、だれが発表しているかがわからないことが多く、こうした配慮はオンラインで参加されている方にはありがたいのではないかと思いました。個人的には、カメラがあっても、顔と名前が一致しないこともあり発言前に名前を言うルールを基本にするとよいと思います。こうした設備的な配慮もあり、なんとかWBSでの講義を受講することができています。
この講義は、学術論文に関するプレゼンテーションとその内容についての議論を中心にすすめられるため、学術論文の読解に慣れていない場合には準備に時間を要するかもしれません。そうした受講生を対象に講義の3日前にはオフィスアワーがあり、さらにグループ分けによる相互扶助の工夫もされていました。疑問がある場合でも、講義前にその疑問を解消することが可能で、講義中は議論に集中できるサポート体制が整えられていました。
社会では多様性を求める声があがっており、比較的多様性は認知されつつあるように思いますが、多様性を受け入れることにはまだ課題があるように感じています。国連SDGs(Sustainable Development Goals)には、目標4:質の高い教育をみんなに(すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を推進する)、目標5:ジェンダー平等を実現しよう(ジェンダーの平等を達成し、全ての女性と女児のエンパワーメントを図る)があります。これらはいまだに深刻な課題と認識されているので目標となっており、課題解決のためには社会全体のマインドセットを変えていく必要があるように感じます。質の高い教育をみんなに提供するためには、様々なバックグラウンドの人に対するサポート体制や工夫が必要ですし、ジェンダー平等とは男女が同じ環境で学ぶことではなく、男女が同じ内容を学べることだと思います。
こうしたWBSの先進的な取り組みが、SDGs目標4と目標5の達成に寄与し、女性・子育てママなどを含めたすべてのマイノリティに対する門戸を開いたままで、多様性を受け入れていただけることを切に願っています。
次回の更新は8月6日(金)に行います。