[ STE Relay Column : Narratives 139 ]
金今 大樹 「大学発技術の事業化」

金今 大樹 /  早稲田大学大学院経営管理研究科 

[プロフィール]1991年3月岩手県盛岡市生まれ。高校卒業する18歳まで自然豊かな岩手県で育つ。東北大学工学部へ進学。工学研究科での2年間も含めた6年間を仙台で過ごす。
2015年双日株式会社へ入社。入社後5年間は、資源部隊にてレアメタルのトレード・事業投資に従事。6年目から金属・資源本部の新規事業創出チームにて水素案件の事業化を担当。
2021年4月より社費派遣で早稲田大学大学院経営管理研究科・全日制グローバルプログラムへ入学。日課はコロナ禍の運動不足を解消するためのリングフィットアドベンチャー(2021年6月29日現在、レベル160)。

◆はじめに

初めまして、牧ゼミM1の金今と申します。非常に珍しい名字とよく言われます。金今姓はあの有名な世界遺産“平泉・金色堂”に近い岩手県一関市川崎町に多く分布していますので、きっとそれらと何かしらの関係があるものだと勝手に理解してますが、実際のところ真偽は不明です。借りして、なぜ牧ゼミに所属しているのか、今後どうしていきたいのかについて、過去の経験と関連付けながら語らせて頂きたいと思います。

自身の経歴でも“金”という言葉には縁があり、大学・大学院時代は金属材料の研究、社会人では金属資源関連の仕事に従事しています。残念ながら、今のところ“お金”には縁遠いので早稲田ビジネススクールで学んで“お金”にも縁がある人生にしたいな、と心から願っています。今回、この場をお借りして、なぜ牧ゼミに所属しているのか、今後どうしていきたいのかについて、過去の経験と関連付けながら語らせて頂きたいと思います。

◆牧ゼミについて

私は早稲田ビジネススクールで勉強したい、というより牧先生の下で学びたい、という想いで早稲田ビジネススクールに入学しました。社費派遣の最終面接でも牧先生の名前を出して、この先生のところで学びたいんだ、と役員に訴えて選考を通過したので、無事牧ゼミに配属になり、一安心です。
さて、なぜここまで牧先生の下で学びたかったかと言うと、牧先生の研究分野である“大学発技術の事業化/大学発ベンチャー”に私が強い興味を持っていたからです。大学時代、大学発ベンチャーにインターン(という名目での若い労働力の提供)した際、1年間関わっても中々上手く成長していかない現状を目の当たりにしました。更には日々多くの研究者・学生が研究に勤しんでいるにも関わらず、世の中に出ていない/日の目を見ていない研究・技術が山の様に存在すると感じました。こういった状況を肌で感じ、多くの同級生がメーカーへ就職していく中、”技術とビジネスを繋ぐ仕事がしたい”という想いを胸に商社へ就職しました。商社に入社し、日々の業務に忙殺され、“技術とビジネスを繋ぐ”というキーワードを忘れてしまうこともありました。しかし、縁あって新規事業チームに配属になり、過去の想いを形にすべく“技術とビジネスを繋ぐ”というテーマで新規事業を検討していましたが、中々成果を出すことはできず、暗中模索の状況が続く中で社内の“MBA派遣生募集”という情報を発見しました。応募可能なビジネススクールを調査したところ、早稲田ビジネススクールに”大学発技術の事業化/大学発ベンチャー”を専門分野としている先生がいる(これが牧先生です)、ということを知り、早稲田ビジネススクールに出願、無事合格し現在に至ります。

◆入学後3か月が経過して

【ゼミ活動】
4月末に配属ゼミが決まり、5月からゼミ活動が本格的に始まりました。中でも特に印象に残っているのは6月の英語ゼミにゲストスピーカーとしてお越しいただいたGlobal Catalyst Partners Japan(以下GCPJ)・大澤様、5月の日本語ゼミにゲストスピーカーとしてお越しいただいた東北大学経済学部福嶋教授のセッションです。

①GCPJ・大澤様
恥ずかしながらこのゼミに入るまでGCPJのことも大澤様のことも存じ上げておりませんでしたが、シリコンバレーでベンチャーキャピタリストとして結果を残されてきた大澤様の講演は強く胸に響きました。私が所属していた会社も含めて、日本企業は徐々に変わってきている印象はありますが、大澤様が仰っていた通りまだまだ破壊的イノベーションの創出とは縁遠い状況です。その状況を打破するために大澤様が構築されたStructured Spin Inモデル(*)は非常に有効であると感じており、自身が活用したいという想いもありますので、派遣元の会社でもこのモデルの導入が出来ればと考えております。
(*詳細は[ STE Relay Column 029] 大澤 弘治 「 アントレプレナー 募集!」参照)

②東北大学・福嶋教授
私が大学発ベンチャーに興味を持ったのは、福嶋教授の“大学発ベンチャーとクラスター戦略”という著書を偶然大学時代に読んだことが1つのキッカケです。牧先生と福嶋教授はサンディエゴのクラスターを共同で研究されているご縁から日本語ゼミのセッションで講演をいただきました。これまで“クラスター”や”エコシステム”という言葉は何気なく使っていましたが、これらワードの経済学・地域企業論の理論に基づいた定義、さらには地域の経済外部性、地域が産業に及ぼす影響などその他様々講義頂き、今後地方からの大学発ベンチャー創出などを考える上でベースとなる基礎知識を蓄積することが出来ました。議論が白熱してしまい、福嶋教授がこれまで注力されてこられたテキサス州オースティンの事例まで議論できませんでしたので、早いタイミングでもう一度お時間を頂戴出来れば嬉しく思っております。

牧先生に繋いで頂いたこのようなご縁を大事にし、こういったネットワークを今後の人生で活かせるよう邁進する所存です。今後のゼミ活動でも様々なゲストスピーカーの方にお越し頂き、更にネットワークが広がればと強く期待しています。

また、春学期を通して“Experimentation Works”という2020年2月に発刊された本の輪読を実施しました。この本の輪読を通して、海外の企業ではIT企業に限らずビジネス実験を通してより精度の高い意思決定を実施していることを学びました。早稲田ビジネススクールに入学するまでビジネス実験という言葉すら知らない私にとって、この事実は衝撃でした。私が所属している会社は伝統的な日本企業に分類され、DXなどについてもやっと社内に浸透しつつある状況ではありますが、次のステップとして継続的に実験をする組織となり、より精度の高い意思決定を行えることは成長する上で必要なのでは、と感じており、こういった組織となるべく在学時から少しずつ働きかけていければと考えています。

【講義】
春QTRに大学発技術事業化に関する知見を蓄える意味で受講した牧先生が担当されている“科学技術とアントレプレナーシップ”はハードでしたが有意義なものでした。この講義を通じて牧先生にピックアップ頂いた31本のイノベーション、アントレプレナーシップ、大学発ベンチャーなどに関する論文を読み、この分野を学ぶ上で必要な基礎知識、社会科学の定量論文を読む力を身につけられました。講義が終わった現在は、講義の中で大学発ベンチャーの教科書として紹介頂いた“大学発ベンチャー – 新事業創出と発展のプロセス・Scott Shane著”を少しずつ読みこみ、更に知見を蓄えています。自身の修士論文も大学発ベンチャーに関する分野で纏めようと思っていますので、まずは適切な問いの設定が出来るよう知識/知見を蓄えている段階です。勿論のことながら、大学発技術の事業化に際し、経営戦略やファイナンス、マーケティング、財務会計、人材組織など幅広い経営に関する知見は必要ですので、こちらについても毎日必死に取り組み、今後も更なる発展的な選択科目を通して継続的に学んでいこうと思います。

◆今後のゼミについて

全日制では英語ゼミがメインです。商社勤務ということもあり、業務では英語には慣れ親しんでいるものの、ファシリテーションを確りと行なえるほどの英語力はありません。過去、派遣元企業の業務において日本企業でコンソーシアムを組成し、資源権益を獲得するプロジェクトを担当していましたが、その際買収先オーナーとの会議では他社にほぼ全てのファシリテーションを任せてしまった苦い経験があります。勿論M&A関連の知識が足りなかったことも要因の1つですが、英語でのファシリテーション能力も要因の1つであったと感じてますので、ゼミを通して英語でのファシリテーション能力を高めたいと考えています。
また、先日のゼミで2021年秋学期の英語ゼミは”Lab to Market”の英語版を実施予定、と牧先生よりアナウンスがありました。私が早稲田ビジネススクールに入学して一番楽しみにしている講義がこの”Lab to Market”ですので、“大学発ベンチャー – 新事業創出と発展のプロセス”を読み込みつつ、秋学期の到来を楽しみにこれから過ごそうと思います。
最後に、牧ゼミでの学びを大学時代に思い描いていた“大学発技術の事業化”という仕事に繋げられるように残された2年弱を全力で学びたいです。

 


次回の更新は7月30日(金)に行います。