峯藤 健司 / 三菱電機株式会社
研究開発だけでなく、経営企画から事業開発まで幅広い経験を持ち、様々なプロジェクトを主導。ベンチャーファイナンスにも精通、メンターとして数多くのスタートアップのハンズオン支援を経験。
イントロダクション
はじめまして。三菱電機株式会社 未来イノベーションセンターに所属しております峯藤(みねふじ)と申します。2020年10月より、「科学技術と新事業創造ファクトリー」牧兼充 准教授と「戦略リターンの定量分析」をテーマに共同研究をしております。
2017年より、現職にてスタートアップとのオープンイノベーションを推進する立場となり、「戦略リターン」の評価について課題意識を持っていました。共同研究を通じて、イノベーション領域における定量分析を中心に先行研究の調査、定量分析の在り方について議論を重ねています。日々、業務に励みつつも、この学びの機会を大切にしていきたいと思います。
このColumnでは、「科学技術と新事業創造ファクトリー」牧兼充 准教授との出会い、そして共同研究に込める想いについて原稿を寄せてみたいと思います。
オープンイノベーション戦略研究機構との出会い、そして「科学技術と新事業創造ファクトリー」との共同研究
ファクトリー・クリエイティブ・マネージャーを務められている渡邉 崇之様のご紹介で、オープンイノベーション戦略研究機構に出会い、そして「科学技術と新事業創造ファクトリー」をご紹介いただきました。
これまでスタートアップとのオープンイノベーションを推進する役割を牽引してきましたが、戦略リターンを重視したオープンイノベーションの取り組みには成果の見えにくさがあり、苦心していました。
近年、名だたる企業がコーポレートベンチャーキャピタルを組成、マイナー出資を中心としたスタートアップとのオープンイノベーションが活発化したことにより、「戦略リターン」や「事業シナジー」といったキーワードが注目されています。成果として何を期待していたのか、本当のところ誰にも正解はわかりません。戦略リターンという言葉を意識し過ぎているからなのかもしれません。
しかし、何を期待していたのか、何を得ることができたのか、道半ばだとしても客観的な評価を得ることができれば、安心してもっと前に踏み出すことができるのではないかと思い、共同研究に向けた議論が始まりました。戦略リターンをどのように定義し、どのように評価すべきか、この難題に立ち向かうためにお力添えいただける仲間を探しました。
オープンイノベーション戦略研究機構 副機構長 中谷義昭様にもお取り計らいいただき、文理の垣根を越えた研究体制を組んでいただきました。まずは早稲田大学 創造理工学研究科 経営システム工学専攻 大野高裕 教授をご紹介いただきました。興味を持っていただき、大野高裕 教授からは同専攻 枝川義邦 教授、鬼頭朋見 准教授、政治学研究科 島岡未来子 教授をご紹介いただき、あっという間に議論の輪が広がっていきました。そして現在、「科学技術と新事業創造ファクトリー」を中心に、オープンイノベーションに関する共同研究を進めています。この共同研究の直近の成果としては、まずはケーススタディを作成することを考えています。とある事例から一般化できる事柄、一般化できない事柄を分類、突き詰めながら大きな一歩を踏み出したいと思います。
一人の研究者として、共同研究に込める想い
研究者という立場を離れて久しく経ちましたが、学ぶことの大切さをあらためて感じています。世界で戦う経営者を目指して、専門と言える領域を持つためにも、学位取得に対する想いが再び湧き上がってきました。
近年、数多くの経営戦略のなかでイノベーションの創出が謳われています。大企業とスタートアップのオープンイノベーションが再び注目されるなか、ベストプラクティスと称される事例はまだ存在していません。これまで定量分析が困難であった戦略リターンの成果を定義することで、企業成長並びに経済発展の原動力となり得るイノベーションの創出を促進することができるのではないかと期待を寄せています。大企業の課題である自前主義からの脱却、研究開発の行き詰まりを解消するためにも。
次回の更新は2月19日(金)に行います。