[ STE Relay Column : Narratives 108]
手塚 なぎさ「牧先生の積年の想いの詰まったL2M」

手塚 なぎさ / 早稲田大学経営管理研究科 / ルネサス エレクトロニクス株式会社

[プロフィール]岩手県沢内村生まれ、新潟育ち。16歳で初の海外、University of South Alabamaに入学。リーマンショックの2008年に大学卒業、日本に帰国し、ERPパッケージソフトウェアメーカーのワークスアプリケーションズに入社、ソフトウェアエンジニアを経験の後、In-House Recruiterとして社内転職。インド、シンガポール、中国のTOP大学で、Engineer採用に従事する。現在は半導体大手のルネサスエレクトロニクスにて、HRBPとしてBusiness Headsと共に人事変革に奮闘する。早稲田大学経営管理研究科 夜間主総合プログラム2年 入山ゼミ所属。

「牧先生のL2Mへの想い」
Labo to Market、通称L2M。「科学技術の商業化と科学的実験」の授業である。牧さんが最もやりたいと望んでいた授業で、2020年夏Qにようやく願いが叶った。他の牧授業同様、授業の負荷は大きく、受講者には高いCommitmentが求められる。もちろん牧先生のCommitmentもすさまじかった(笑)。
「科学技術の商業化」は、座学で学ぶことはできない。そのため、この授業ではいつも以上に多くのGuest Speaker、そして実業で活躍されるメンターの方々がお力を貸してくださった。このような素晴らしい方々を知れる「場」と、その後の業務・起業で役立つConnectionを提供してくれる。このLearning Communityを活用するかは受講生次第である。

「STEとL2M」
私は春Qの科学技術とアントレプレナーシップ(Science, Technology and Entrepreneurship)、通称STEも受講している。STEとL2Mで学べるTopicsは似ている。STEは理論編、L2Mは実践編、と私は位置付けた。Innovation、Entrepreneurship 、Star Scientist 研究は、MBAの中でも新しい分野である。STEでは、これらの分野の最新の、Coolな論文を英語原文で輪読する。STEで取り扱う論文は、自分では読まない分野であるが、興味深い論文にたくさん出会えた。食わず嫌いはいけない、という教訓である。自身の興味の幅を拡げられる、思いがけない出会いがある、本屋さんの様な楽しさがある授業である。ぜひM1で履修して欲しい。
また、STEでは定量論文を読むための基礎知識を身に着けられる。今年はOnline授業になったことにより、それらの武器は録画講義によって提供された。牧先生が何度でも同じQualityで教えてくれる!?1.5倍速、3回も視聴してしまった。コロナによって、予期せずオンデマンド授業となったが、オンデマンドもいいじゃないか!

「リスクフリーの実験の場」
早稲田Business SchoolはMBAを取得する大学院であり、グローバルマインドを備えたビジネスリーダーの育成を目的としている。私の苦手なFinance、Accounting、そして経営学の素晴らしい理論を学ぶことができる。座学が中心となっており、実験・実践の機会は少なく、それは実業務で行うこととなる。学んだことを明日業務で実践できる、これが社会人MBAの一番の利点である。
では起業家ではどうだろうか?会社人と起業家では、リスクが異なる。会社人は自分の責任の範囲で会社のリソースを使いまくって、言い換えれば会社を利用して自己実現をする。自己実現の結果、会社にもリターンがあるので、会社も社員のチャレンジをある程度許容する。会社にとって、従業員はポートフォリオの一つという見方をすれば、会社のリスクヘッジの範囲内であれば、我々従業員の失敗は吸収できる。
一方起業家は、多くの場合ポートフォリオは自分自身のみで、リスクヘッジは乏しい状態である。起業、製品化の成功の秘訣は、早めに、たくさん、小さな失敗を積み重ねることであるが、実世界でそれを実践することは、それなりのリスクを伴う。リスクフリーでそれを実験・疑似体験できるのが、このL2Mである。

「L2Mの最終課題」
L2Mでは、早稲田大学が所有する科学技術、研究Seedsを使い、どのように商業化するかを最終日に研究者に向けてプレゼンテーションする。技術への理解、Marketing=市場を作る、Potential UserへのInterview、彼らの抱えるPainを如何に解決するか、他知財による制約、それらを基にプレゼンテーションを組み立てていく。発表時間は限られているため、エレベーターピッチ同様、プレゼンテーションとしての魅力も求められる。「選択した研究Seedsを使うこと」以外の制限は無い。制限が少ないビジネスコンテストである。
毎回の授業では、仮説を立てることの重要性、良い実験とは何か、実験手法、高速で仮説検証を回すことの重要性を理解する。Narrativesなプレゼンテーション手法の共有など、最終発表に向けて、学生の発表の質を高めることはもちろん、ハードルを上げることもぬかりない(笑)
研究Seeds提供の研究者へのInterviewの機会もある。実業務で望んでも、なかなか得る機会が難しい、貴重なチャンスではなかろうか。研究者の貴重な時間を頂いている訳であるから、我々受講生のInterviewへの意気込み、準備へのCommitmentは言わずもがなである。
授業なので、失敗してもリスクフリー、ただし研究者、最終課題評価者の実務家の方々の貴重なお時間を頂いているという適度な緊張感により、L2Mは素晴らしい実験の場となっている。
ぜひ、L2MというLearning Communityを活用し、自分自身の可能性を実験して欲しい。L2Mは始まったばかり。牧先生のことなので、今回初めてL2Mをやってみて、次回やってみたいことでウズウズしているはずである。来年度以降、更に進化を遂げるであろうL2Mに注目して欲しい。


次回の更新は9月11日(金)に行います。