石川 寛和 / 早稲田大学経営管理研究科 / グラクソ・スミスクライン株式会社
いつもSTE Relay Columnをご覧いただき、ありがとうございます。現在、牧ゼミ3期生(夜間主総合コース)は6名在籍しています。COVID-19の影響でスタディーツアーやゼミ合宿など予定していたイベントが開催できず、内容は未定ですが、今後この6名全員がRelay Columnをつないでいきます。まず一人目は、いっしーこと石川寛和氏です! (牧ゼミ夜間主総合3期生一同より)
牧ゼミ3期生のいっしーです。今回は2月のプレゼミから春ゼミ前半での出来事を振り返りたいと思います。2月21日(金)にプレゼミが開始。牧さんからは厚さ5㎝の紙資料を渡されてビビりながらも、最初は第2期生の大角知也さんや阿部淳一さんからゼミでの心構えや過ごし方などを教えて頂き、ようやく始まるという実感が湧いてきました。その後、2月28日(金)からはコロナウィルスによる感染拡大防止のため、初めてのzoom+UDトーク(音声認識アプリ)の文字表示によるゼミを実施。徳橋和将さんからは初めて触るStataのソフトウェアの操作を教授して頂き、藤尾夏樹さんや大塚玲奈さんからは修論を進めるにあたってのTipsやコツなども教えて頂きました。以下からはついに4月から本格的なゼミが始まったので、学んだことを色々と記載していきます。
・アントレプレナーとは何か?
4月3日(金)は「遠い空の向こうに(原題:October Sky」という映画を見ながら、「アントレプレナーとは何か?」を議論しました。この映画は実際にNASAで働いていた技術者の実話を元にして制作された映画です。主人公のホーマーは1957年10月にソ連が人工衛星スプートニクの打ち上げに成功したというニュースをきっかけに仲間とともに自分でロケットを作って飛ばすという夢を抱きます。もちろん、夢を達成するまでに多くの失敗や周囲の反対を食らうのですが、あきらめずに多くの人を巻き込みながら成長し、メンターのサポートも借りながら最終的にコンテストに優勝します。ここでの学びは「自分自身の姿勢は変えられる」ことです。映画の主人公のような姿勢を持つことでキャリアをマネージし、広がっていけるのではないかと感じました。
・英文レジュメは自分をマーケティングすることである
4月27日(金)にはシリコンバレーに実在するポジションに就くことを前提にした英文レジュメをヘッドハンター立野さんに添削して頂きました。英文レジュメを作成したのは初めてだったため、これまでの自分のキャリアの棚卸やMBAでの学んだことを振り返りながらでした。当日は各自が希望するポジションに対して現状と理想のギャップをどうつなげるのか、どこを修正すると読み手に伝わりやすくなるのか、などのアドバイスを頂きました。最後に英文レジュメは「自分をマーケティングすること」、1年に1回正月当たりに見直したり、ポジションごとに英文レジュメの内容をカスタマイズすることの大切さも学びました。
・COVID-19の論文の輪読
現在、世界中でCOVID-19に対する病態の解明や治療法のヒントを見つけようとしています。その中でも話題になったのはBCG接種の有無がCOVID-19の感染率との因果関係がみられるのかどうかでした。以下に記載した2つの論文を統計的妥当性や内的妥当性、バイアスの有無など科学的思考法を駆使して議論しました。一番面白かった議論はたとえ、論文の内的妥当性に疑問があったとしても論文を出すべきか否か、でした。今このように世界中が混乱しているような状況においてはまず検証した結果を世の中に出して議論をしながら次につなげていくことが大切という意見には腹落ち感がありました。
・初の修論テーマ発表会
GW中であってもゼミ生に休みはなく、1人1時間の合計6時間に渡る熱い?修論テーマ発表会でした。ゼミ生のそれぞれの興味や関心が多種多様であり、新たな気づきや発見があった日でした。私の場合はテーマに対する想いが強すぎたせいか、一から練り直しになりましたが、もっと探索していきたいと思います。
・Harvard Business Reviewやケースを通じたビジネス実験
5月のゼミは「A Step-by-Step Guide to Smart Business Experiments」から始まり、「チーム・ニュージーランド」、「Entrepreneurship Reading: Experimenting in the Entrepreneurial Venture」、「アップルのデザイン哲学」、「Productive Innovation」、「Booking.com」を輪読しました。すべてのケースに通じることは、なぜビジネスにおいて実験が必要なのか、どのようにして実験をしながらイノベーションを生み出すのか、実験するにあたって必要な人、インフラ、組織文化はどのようなものか、などを議論しました。意外な発見があったのは、スタートアップ企業がビジネスモデルを考えるにあたって厳密な実験と科学的手法を用いながら早くテストの実施とフィードバックを得て完成させていく「仮説ドリブンアプローチ」プロセスが修論作成にも置き換えて同じように考えられることでした。抽象度を上げて考えれば基本的な思考法は変わらないと実感しました。
・長内ゼミ・及川ゼミ・牧ゼミによる合同ゼミ
5月15日(金)は総勢20名以上が集まる合同ゼミでした。お題(「ものづくり」視角によるサービス現場の分析:花街と自動車工場の比較を通じて, 組織科学 Vol.42 No.4:62-76 (2009))はサービス業である京都の花街、製造業のトヨタという明らかに異なる2つの業種を組織能力、オペレーション、知識共有の範囲などのフレームワークで比較分析するというユニークなケースでした。相違点や共通点を探すのは頭の体操になり、具体から抽象度を上げて考えるためのトレーニングにもなりました。芸事の種類や座持ちなどあまり見聞きしない独特の言葉も知ることができました。いつか京都の花街に行ってみたいですね!
・マインドフルネスの体験会
5月22日(金)には牧さんのSFC後輩である中村悟さんをお招きし、実際にYahoo!に勤められていた際のマインドフルネスの取り組みや意義などをお話しいただきました。マインドフルネスはGoogleから始まり、シリコンバレーのCEOなどが積極的に取り入れているといわれています。マインドフルネスは意識的に自分の状態を認知することでよりよい意思決定につなげられるとのこと。普段、私たちはせわしなく日々の業務を過ごしていると思いますが、時間を作って1分ほど目を閉じて呼吸を整えてみることで、物事を広く捉えることができ、より自分を客観視できるのではと思いました。まだまだその域には達していませんが、今後も続けていきたいと思います。
・ICTが変える障害者の生活
6月5日(金)には牧さんのSFCの先輩である中根雅文さん(全盲)をお招きし、障害者の生活がICTによってどのように変わったのかだけではなく、障害者の特徴と周りの捉え方などをお話しいただきました。特に印象的だったのは「本人や周りの意識」による障害でした。当事者はもちろんハンディキャップを乗り越えるために努力をするのですが、同時に周りからの思い込みなどの意識による障害も大きく影響します。本人の意識だけではなく、周りの意識もどのように変えていくのかを考えていくことの大切さを学びました。
以上ですが、わずか2ヶ月だけでも多くの知識の波に打たれるような感覚でした。この原稿を書いているときはあっという間に春クォーターを終えた頃ですが、休む間もなく多くの課題をこなし、すぐに夏クォーターが始まっているでしょう。今はCOVID-19によって授業だけではなく仕事も含めてすべてがオンラインで進めるというニューノーマルな生活が定着しつつあります。一方で、このニューノーマルは人間が持つリアルで得られる感性や想像力が少しずつ鈍っていくのではという危機感も感じています。早く普通の生活に戻れるのが待ち遠しいですね。
次回の更新は7月31日(金)に行います。