早稲田大学ビジネススクール 牧ゼミ夜間主総合2期生 (阿部淳一、大角知也、大塚怜奈、徳橋和将、藤尾夏樹)
はじめに
あっという間の1年間でした。ただ、これまでの人生の中で最も濃密な時間を牧さんとゼミ生と過ごすことができました。今回は牧ゼミ2期生全員でコラムを書き上げてみました。牧ゼミで学んだこと、体感したこと、実際に行動に移してみたことを中心にまとめています。そもそも博士が2名いて、ゼミ期間中に海外勤務が1名、海外留学が1名、在学中にプロジェクトを起こして動くメンバーなどなど、様々な色彩を持ったメンバーとのコミュニティは互いに刺激的でした。春学期と秋学期の振り返りやサンディエゴスタディーツアー、Zoomによる3か国(日本、米国、香港)同時中継のオンラインでのゼミ運営を振り返ってみました。それではご覧ください!
春学期編
牧ゼミを通して深く学ぶことが出来たことと言えば、科学技術イノベーションを起こすためのエコシステムに関る理論とアントレプレナーシップ思考である。科学技術イノベーションを起こすためのエコシステムに関る理論については、サブゼミである「科学技術とアントレプレナーシップ」にて、定量論文を数多く読むことで、アカデミア、VC、スター・サイエンティスト、企業のそれぞれが相互にどのように影響与えて科学技術イノベーションを起こしているのかという理論を学ぶことができた。
春学期のゼミでは多くのゲストにお越しいただいた。Tanabe Research Laboratoriesの櫻井さん、ベンチャーキャピタリスト・山本さん、TomyK・鎌田さん、MIT Media Lab・中垣さん、元国会議員・鈴木さんなど多くのゲスト講師の方々に講演いただき交流していく中で、よりよい世の中を実現するために企業及び社会を自らが変革するという力強い意志、すなわちアントレプレナーシップ思考を肌で感じた。また、シリコンバレーにてヘッドハンティング業務に長年携わってきた立野さんにそれぞれの今後のキャリアを相談する機会を得た。我々牧ゼミ2期生の中にはこのアドバイスを契機に、「新たなチャレンジとして米国子会社に出向して異文化のメンバーと現地で働くことは必ずプラスになる」と背中を押され、新たなステージに挑む決心へと繋がった者もおり、文字通りキャリアに大きな影響が出る素晴らしい機会となった。
サンディエゴスタディーツアー編
牧ゼミと言えば、どんなイメージを浮かべる方が多いだろうか。
ドローンなどのテクノロジー、米国的、酒、科学的思考や具体と抽象、教員がサンダルとTシャツ。。。
勿論学期を通じてこれらは体感できるが、牧ゼミとしての在り方や牧さんの生き様がこれでもかというほど凝縮しているのが牧ゼミのサンディエゴスタディーツアーだ。そして牧さんがこれまで学んだこと、未来を見ようとした試み、見たもの、感動したもの、キャリアの役に立つと思ったことをゼミ生達に全力で惜しげもなく共有し、これからを創り上げようとするものだとも言える。
本当は牧さんがサンディエゴで得られたものを掴むまでの背景、つまりいつも謙遜してる実、重ねてきたであろう牧さんの途方もない努力、覚悟、失敗、日々を大事にしている姿勢など、牧さんと共に過ごすサンディエゴからおもんばかるべきことはいくらでもある。のはずであるが、無邪気な(⁉)我々牧ゼミ2期生達は唯々凄まじい濃密な学びの時間をひたすらこなすことに必死か、はたまた世界一とも言える素晴らしいサンディエゴの環境を終始満喫していた。
具体的には、牧さんが担当するUC San Diego, Rady school of management クラスAの最終発表会の審査員として必死にコメントをし、サンディエゴの海が見える一軒家でサンディエゴでの牧さんの築いた博士人材ネットワークの皆様の前で修論の発表を行い、ソーク研究所の崇高で合理的な理念と建築やIlluminaで先端技術と産業に触れ、アクセラレーターconnectやHigh Tech Highでの先進的な教育でケースのもととなるようなインタビューをした一方で、目一杯電動キックボードでUCSDやサンディエゴの海岸を動き回り、目一杯サンディエゴの海を満喫し、目一杯UberやBirdやLime(電動シェアキックボード)やAirbnbを体感し、目一杯肉料理や牧さんの用意してくれたウニをほおばったのである。朝はBird rock coffeeを飲み、夜はbreweryで格別なサンディエゴビールを飲むわけである。
社会人となったうえで、そしてこのような素晴らしい環境の中で、教員やゼミ生、参加してくれたWBS同級生たちと寝食を共にできた体験はやはり代えがたい。その上で、牧さんがサンディエゴにてアナザースカイを実現している様子から自分の人生観を顧みる機会となる特別な場所ともなった。
秋学期編
秋学期は修論まっしぐらであった。いや、いろいろ寄り道していたメンバーが多かったかもしれない。いや、寄り道していろいろ学び、多様な経験を積むことが仕事のクオリティを上げてくれるので、たぶん、それで良いのだと思う。
というわけで、結論から言うと、修論に挑んだメンバーは、年明けギリギリまで粘りまくって、なんとか論文を仕上げることができた。元々のバックグラウンドや経験値が違うので論文のテーマも内容もバラバラであるし、それぞれ濃いのでここで詳細には触れられないが、全員が限られた時間の中で自分自身の全力を尽くした!
牧さんは修論に懸ける思い「も」強く、MBAの修論はその人の後のキャリアや人生に役立つものにしなければならない、というお考えのもと、各々の経験や個性に合わせてテーラーメードでご指導いただいた。どうもありがとうございました。
ではここで、牧ゼミの修論の特徴を三点だけ挙げておく。
まず第一にタイトルである。読者に読みたい!と思わせるタイトルを付けないと牧さんから許可が出ない。牧ゼミは理系も多いが、いわゆる理系っぽいかっちりしたタイトルではダメなのである。
二つ目はDedicationといって、誰のための研究をしたのかを論文の2ページ目あたりに示している。誰の、どういう課題を、悩みを、苦しみを解決したくて、この研究に取り組んだんだ!という思いを込めているこのあたりで牧ゼミの修論が個性的であることがわかると思う。
そして三点目の特徴は、論文自体ではなく各々のプレゼンである。発表者全員、本番までの毎週のゼミで夜遅くまで何回も発表練習した。最初の10秒が肝心で、立ち位置と動き、発言内容、スライドなど厳しくご指導いただいた。その中で、それぞれの個性に合わせて発表方法が進化し、結果として、分析結果をストイックに説明するプレゼンから、白衣を着てオーディエンスに問いを投げかけるプレゼンまで、さまざまな形となった。
牧ゼミ2期の特徴と学び~遠隔ゼミの運営経験~
我々牧ゼミ2期生の図らずも最大の特徴となったのは、秋学期からのゼミが日本と米国や香港との3拠点からのZoomでの遠隔運営となったことだ。春学期は通常の早稲田キャンパスで学びをしたゼミメンバーが、自らのキャリアを真剣に考え日本から飛び出す決断をしたためだ。これには多分に牧ゼミに入ったからこその刺激や牧さんの存在によるものである。毎週の遠隔中継ゼミであったが牧さんやゼミ生同士の相互協力のもと皆で空間を超えたラーニングコミュニティを作り出すことができた。
米国より
秋学期のゼミは、同じ牧ゼミ生の協力のもと米国からZoomでの遠隔参加となった。時差の都合上、金曜の朝4時から7時までゼミに参加するため、仕事との両立は体力的・精神的に辛いと感じるときもあった。しかし、同期のゼミのメンバーが修論テーマに真剣に向き合っている姿勢を目の当たりにすることで、知識の共有だけでなく、仕事で日々頑張る糧となった。牧さん、ゲスト講師、ゼミメンバーに鼓舞してもらうことで一回り大きくなり自己成長へと繋がる人生における貴重な経験ができた。
香港より
WBS生活の中でも心に残っているのは、香港への交換留学とゼミと言える。
私の交換留学への道は、ゼミ配属直後から始まった。ゼミが決まった翌月に、交換留学の学内応募があったのだ。牧さんに相談したところ、ゼミ配属直後にも関わらず、交換留学したいという私の挑戦に背中を押していただいた。しかし、応募には教員からのリコメンデーションレターを急遽書いていただくといった多大なるサポートいただかなくてはならなかった。それでも、幸いなことに、牧さんのご尽力をいただきながら、無事に交換留学の枠を勝ち取ることができた。
ゼミに授業にと忙しく過ごしていた春学期、渡航まであと2ヶ月というタイミングで、香港でのデモが激しくなり、牧さんをはじめ、WBS関係者、会社関係者の方々にはご心配をかけつつも、無事に?!交換留学をすることができた。
留学中は、オンラインでゼミに参加しつづける環境を牧さんはじめ、石井さん、牧ゼミ日本チームのみなさまに用意していただいた。香港は日本との時差が1時間程度であったため、そこまで時間的苦労もなく、香港の地でも、ゼミに参加し続け、ゼミのメンバーの熱量や気づきを得続けることができたことは、とても財産になった。ただ、日本チームのちょっとした雑談についていくのは多少の難儀を感じた。これは、オンラインとオフラインのハイブリットでゼミを行う際の注意事項かもしれない。
WBSに入学前は、私が香港に留学して、さらに、留学先から日本のゼミに参加することになるなんて、想像もしていなかった。アメリカにいるもう1人のゼミ生も含めた、日本、アメリカ、香港の3拠点で実施するゼミに参加できたことは、今後のITを使った多拠点での人とのネットワーク創りの可能性をより強く感じるきっかけになり、テクノロジーを使って世の中に変化を起こしていきたい、という想いを持った。このような経験をすることができた牧ゼミには心からの感謝しかない。
最後に
本来であれば学位授与式が開催される予定だった2020年3月25日にこのコラムを書いています。まさかこのような状況になるとは想像もできなかった。
ただ、牧ゼミで学んだこと、感じたこと、実践したことのお陰で落ち着いて前向きに考えられる我々が今ここにいる。科学的思考を学んだことにより情報やデータを冷静に見定めることができる。Zoomによるゼミ運営の経験があり、遠隔であってもコミュニケーションを取り互いに学びあえることができる。ゲストや牧さんからの様々な新しい情報を学んだお陰で、このような状況だからこそ科学技術を用いて何かできないかと想像することができる。そして、何より自分はこれまで何をしてきて、これから何をしていくかを考えて実践することを日々問われてきたお陰で、このような状況でも自ら考えて実践することができつつあるかもしれない。少しずつではあるが。。。上記に記載したようなことができるようになったのではないかと振り返っている。
修了というワードを見て「終わった」という気持ちはなく、「やっとスタートラインに立てた」、そんな気分だ。“今日は昨日までできなかったことだけをやってみたい人へ”、この言葉をこれからも胸に、実践し、昨日まではなかった新しい世界をゼミ生一人ひとりが自分らしく創っていきたい。
ゼミにお越しいただいたゲストの皆さん、ゼミに参加いただいたりFtoFやSlackでサポートいただいた1期生の皆さん、一緒にゼミの時間を共にした全日の岡村さんと佐々木さん、様々な面でゼミのサポートいただいた石井さん、WBSの教員の皆さんやお世話になったWBSの修了生や在校生の皆さん、そして、2期生一人ひとりに真摯に向き合ってご指導いただいた牧さんに心から感謝を申し上げて、我々牧ゼミ2期生は新たなスタートを切りたいと思います。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
以上
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次回の更新は4月3日(金)に行います。