塩澤美百咲 / 早稲田大学経営管理研究科 / 株式会社パソナ顧問ネットワーク
牧さんと最高の仲間たちと学んだTOMの授業が終わり、数週間が経ち、少しずつ“牧ロス”も落ち着こうとしてきたところである。これまで既に数名がTOMについてのNarrativeを発信しているが、今回は、期初全くこの授業を取る気がなかった私が、なぜこんなにTOMにアツい想いを持つようになったのかをどうしても発信したいというワガママで書かせていただくことになった。
きっかけは友達の結婚式
先ほどから【TOM】と何度も記載しているが、これは“Technology and Operations Management”の略で、【技術・オペレーションのマネジメント】という夜間主総合コースの選択必修の授業である。
選択必修の授業は指定された5つの授業のうち最低3つは単位を取得しなければならないものである。これは私の憶測にすぎないが、授業名だけを見ると、履修希望学生が多いわけではない授業だと思う。私自身も文系畑で生きてきた人間であるため、最初はTOM以外の4つを取得しようかと考えていた。
2019年秋クオーター土曜5-6限、私は元々必修科目である経営戦略の授業を履修する予定だった。しかし、シラバスをよく見ると、親友の結婚式で欠席することが確定している日にテストがある。。。悩んだ私は、同じ授業が木曜日にも開講されていたため、そちらを履修することを決めた。では、土曜の5-6限は何をしようか。。。?
秋クオーター初めての土曜日、私は3-4限に履修していた授業と同じ教室で行われるから、という安直な理由でTOMを受けてみることにした。
シャワーのプロトタイプを創る
そんなひょんなことから受けてみることになった初回の授業では、驚きが沢山あった。
まず、受講生じゃない人がめちゃくちゃ多い。(笑)この授業には、2名のTeaching Assistantと4名のVoluntary Staffがいる。これは後に知ることになるのだが、この方々がいなければ授業は成り立たないほど構成が作りこまれている。
次に、驚くほどに丁寧なシラバス説明があった。そう、牧さんお決まりの(?)「この授業大変だよ!」という解説である。前年度の履修者アンケートの結果が配布され、予習にかなり時間がかかるが満足度が高いことが数値として証明されていた。夏休みに遊び惚けてしまった私には、若干の脅しのようにも感じた。しかし、今振り返ると既にこの時点で、この授業を終えた先に見える何かに惹かれていたようにも思う。
そして何よりも一番驚いたのは、6限の授業で紙やはさみ、のりなど、小学校の図工の授業のような道具が配られたことである。(笑)他の授業でも学んだことのあった【デザイン・シンキング】に関する授業ったが、こんなに実践的な授業は初めてだった。隣の人と「海外のホテルでシャワーに対して感じた悩み」をヒアリングしあい、配られた道具を使って【プロトタイプ】を創れというのだ。次年度から牧ゼミに入ることとなった大槻一文さんとペアを組んだのも、思い出深い。
抽象化してTake awayを考えること
シャワーの【プロトタイプ】を作って学んだことは何かと問われたとき、何と答えるか。当時の私は、「形にすることで、お互いの認識のずれがなくなって、話をすすめやすい。」というなんとも浅はかな思考しかできていなかった。
しかし、もっと抽象化して考えなければ実務に活かせないという。例えば、大槻さんとのペアワークでは、一度短時間で作ったものを見せてもらい、フィードバックをして、それを基に最終版を作ってもらったのだが、「明らかに未完成のものの方がフィードバックしやすく、完成版の精度が上がる」という学びも得られる。これは、社内の議論でも応用ができる。先述した私の学びでは、実務にはなかなか活かすことができないのだ。
この後、私は “如何に抽象化するか” というスキルを磨くことに苦戦しながら授業の履修を進めることになる。
ケーススタディを行う意味~MBAでの学び方を考え直す~
今まで春学期の授業では【抽象化】なんて考えたことがなかったので、この学びは私の中で非常に大きかった。TOMでは、毎回ケースを読んで出席し、授業ではそのケースのキーポイントをみんなでディスカッションしながら整理していく。なぜケーススタディを行うのか?それは、「理論と実務を行き来して考えることができるから」であると牧さんは言う。
つまり、 ケースを読む → 背景や状況、結果などを整理する → 理論と重ねて考える → 学びを抽象化する → 実務に活かす というのが正しいケーススタディなのだと、今更ながら学んだ。
プロフィールにも記載した通り、私は職場での刺激不足を埋めるためにWBSに入学したのだが、ここに来て、今までの学習がどれほど受け身姿勢だったのかを思い知った。もっと学ばないといけない、もっと脳ミソを駆使しないといけない、そんな風にお尻に火をつけられたような気持ちになった。
1授業だけで学びを納めないこと
先述のとおり、この授業では毎回ケースを取り扱う。つまり1日で2ケースについて考えることになる。5限のケースと6限のケースで共通する点と違う点はどこか、今まで学んだケースでも同様の内容はないか、など常にアンテナを張り巡らせて考えることで学びが深まる。
例えば、慶応義塾大学先端生命研究所所長の富田勝さんがゲストスピーカーとしてお越しになられた日、その前の5限では医療界のエジソンと呼ばれているボブ・ランガーについてのケースを取り扱った。ランガーの研究室が成功する要因を洗い出し、それは日本で実現できるのか?という問いについて皆で討議する。私の意見は「NO」だった。しかし、6限に登場した冨田さんは、ランガー研究室と同じような偉業を日本で成し遂げているという。何が成功要因なのか、思考を張り巡らせる。
その他にも、GoogleとUberのケースを取り扱った日には、Googleの花崎智弘さんと元Uberで現役WBS生の安永修章さんにもディスカッションに加わっていただき、議論を進めた。この時の学びの中には、「イノベーションを起こすには法規制に従順(完全なホワイト)ではいけない面もある」というような内容もあった。しかし、23&Meという遺伝子検査の消費者向け市場を開拓した企業のケースの際、「国の指示に従うべきか?」という質問に対して「NO」と答えた人の方が多かった。では、GoogleやUberと23&Meでは何が違うのか?このようなことを思考し続けられるのがTOMなのだ。
どれだけ頭を使う授業で、どれだけ学びが深められる授業なのか、お分かり頂けただろうか。
授業だけに留まらないLearning Community
このように、1授業だけで学びを納めるのではなく、各回のリンクを考えることで学びが深まるTOM。もちろんここまでくると、学びは授業の中だけに留まらない。
WBSでは、よく授業後の懇親会という名の飲み会が開催されたり、連絡伝達に使われる履修者のみのFacebookグループが作られたりする。この授業では、これらの活用レベルが半端ない。(笑)
飲み会では、ただ親睦を深めるだけではなく、その日の学びを深めるための議論が活発に行われる。それ以上にすごいのはFacebookで、みんなが仕事をしているはずの平日でも、通知は鳴りやまない。このFacebookグループでは、牧さんやTAだけが投稿するとは限らず、誰でも投稿することが可能になっている。授業で学んだことと、自分の身の回りの出来事やニュースとのリンクを見つけて発信する。その発信をみたメンバーは、それに対する意見をコメントする。こうして、毎日TOMのことを忘れることができないくらいに、学びが深まっていくのである。
決して一人ではできない、みんなの「学びを深めよう」「最高の授業にしよう」という想いが集結してこそ成り立つ授業なのである。
これからの しおざわみもざ について
最高のLearning Communityをみんなで形成した2019年秋のTOM。実はFacebookグループでの投稿は、まだ定期的に行われている。こんなにも学びや気づきを共有することに前向きであるコミュニティが他にあるのだろうか。
やると決めたら即行動、考えるよりも行動、そんなタイプの私の欠点は持続性と集中力である。苦笑
WBSへの入学も取り敢えず刺激が欲しいという気持ちだけで決めたが、このままでは中身が空っぽのMBAホルダーになってしまうという危機感を持つことができた。また、自分の知識の少なさや思慮の浅さを痛感することができた。この機会への感謝を忘れずに、知識を深めることと学びの抽象化を継続すること、そしてそれを実務に活かしていくことをここに誓いたい。
改めて、この最高の授業を創り出してくださった、牧さん、TAの松田大さん引寺佑輔さん、VSの土肥淳子さん、川村聡宏さん、渡邊崇之さん、横田清夏さん、一緒に授業を盛り上げてくれたWBS生の皆さん、本当にありがとうございました!!!
ご精読、ありがとうございました!どろん
次回の更新は1月10日(金)に行います。