出村 大進 / 小学館
イントロダクション
私は大学卒業後、新卒で2002年に出版社の小学館に入社しました。「週刊ポスト」や「小学四年生」、「てれびくん」などの編集部を経て、2010年からマーケティング局のコミック担当になりました。
8年前、私が小学館のマンガに抱いていた印象は、「面白い作品はたくさんあるのに、うまく読者まで届いていないのではないか。もっとしっかりとマーケティングを考えれば、戦略的にヒット作を出せるのではないか」ということでした。
マーケティングシステムの構築
私たちがまず取り組んだことは、マーケティング活動を見える化するシステムの構築でした。どの作品が、どのプロモーションが効いて、いつ、誰に、どこの書店で、どのように買われるのか、が一目で見えるシステムです。
このシステムにより、次第にヒットの方程式が見えてきました。ドラマ化時の売上の伸ばし方、ネットから火が付くマンガの特色、ロングセラーにする方法、80巻からでも売上を伸ばす方法など、勝利の方程式が見つかるにつれて、次第に戦略的にヒットを作れるようになってきました。
そして一去年の夏には、雑誌、書籍、コミックのマーケティング戦略に携わる新部署が立ち上がりました。しかし、雑誌、書籍、コミックとまったく性質の違う商品を扱うようになると、より高度なマーケティングの知識が必要になりました。しっかりと体系的にマーケティングを学びたいと強く思い、WBSへの入学を決意しました。
「技術・オペレーションのマネジメント」の受講を決意
さらに、私が働いている出版社は長年、「ペンと紙とアイディアで勝負!」という、最新技術やMoTとは程遠い世界にありました。しかし近年のデジタル化により出版業界を取り巻く状況は悪化を続けており、「私もしっかりとMoTを学び、この危機をチャンスに変えたい!」と感じるようになりました。
私たちが構築したマーケティングシステムをより強固なものにしたい、そして出版社を取り巻く環境の危機をチャンスに変えたい、その2つの思いを胸に、修士1年目の秋に、牧先生の「技術・オペレーションのマネジメント」を受講しました。
驚きの連続の授業
牧先生の授業は、驚きの連続でした。
驚いたことの一つ目は、ゲストスピーカーの方がとても豪華だったことです。ベンチャー投資家の大澤弘治さん、TerraDroneの金子洋平さん、バイオテクノロジーの原泰史さん、Uberの殿崎俊太郎さんなど、実際に来てくれた方や、Skypeで世界中から参加してくれた方も含め、毎週ゲストが参加してくれました。
ケーススタディの会社や業界に従事している方から実際にお話を伺い、ケースとの相違点や現状などを聞くことでより学習の理解が深まり、アカデミックと実務の両方から学ぶことができました。
二つ目は、MoTの授業にふさわしく、新技術が授業でどんどん使われたことです。ドローンで集合写真を撮ったり、アレクサでコールドコールをしたり、ウェブ版クリッカーでアンケートやミニテストをしたり、23andMeの実際の結果で議論したり――。
実物に触れて体感することにより、座学だけで学ぶより深く議論ができ、より理解できました。やはり、自分の目で見て、実際に試してみることの大切さを学びました。
学んだこと
毎週たくさんの会社や業界の事例を扱いました。そして授業の最後には「技術の歴史から最新テクノロジーまで」という軸でも、「技術経営と生産管理」という軸でも、「リアルとデジタル」という軸でも、「基礎と先端領域」という軸でも、幅広く体系的にMoTを学んでいたことに気づきました。今行っている実務にはどんなMoTが合い、生かせるのか、フレームワークや思考法で考えることができるようになりました。
今の私の夢は、私たちが作ったマーケティングシステムの精度をより高度にして、オペレーションを改善できる機能を追加したり、いずれはどの出版社も使えるようなプラットフォームにしたい。牧先生の授業を受けて、そう考えるようになりました。
次回の更新は9月28日(金)に行います。早稲田大学ビジネススクール2年の田巻 常治さんです。