科学技術とアントレプレナー研究所は、2024年10月に早稲田大学内に設置された比較的新しい研究所です。科学技術はイノベーション創出のための知の源泉です。その知の源泉をどのように生み出し、どのようにビジネスに繋げていくのか、というプロセスに関わる多様なトピックについて扱っています。
この研究領域は、早稲田大学内では今までに、ビジネス・ファイナンス研究センター科学技術とアントレプレナーシップ研究部会、オープン・イノベーション戦略機構科学技術と新事業創造リサーチ・ファクトリーなど、複数の拠点において活動が推進されてきました。それらの研究活動を統合する形で、新たに科学技術とアントレプレナーシップ研究所を設立しました。同時に、教育活動を担うビジネス・ファイナンスセンター科学技術とアントレプレナーシップ研究部会とは密接に連携していきます。
前身組織での研究活動では、具体的に以下のような社会へのインパクトを創出しています。
- スター・サイエンティストの研究は、具体的な政策に反映される段階にまで来ています。経済産業省産業構造審議会イノベーション小委員会、経団連Science to Startup Task Force、内閣官房「創薬力の向上により国民に迅速に医薬品を届けるための構想会議」のいずれの会議体においても、政策目標の中に、「スター・サイエンティスト」の活用が含まれるようになりました。2024年7月に首相官邸で開催された創薬エコシステムサミットにおいて、岸田前総理が「スター・サイエンティストの育成」を触れるなど、社会的なビジビリティが上がっています。
- ベンチャー・キャピタルに関する研究などの実績により、シリコンバレーのVCから寄付金を受けました。この資金を活用して、硏究院准教授、硏究院講師を雇用し、研究活動を進めています。本研究所は日本有数のベンチャー・キャピタル研究の拠点に今後なりうると思っています。
- 米国の研究者と進めてきたフィールド実験について、共同研究企業が増え、かつ海外研究者が関わるコミュニティが形成されています。その成果は国際的なトップジャーナルへの投稿を現在準備中です。
- 本研究所に関わる研究の研究費は前身組織を含めて、総額1億3,074万円となります。研究費の金額で研究の質を評価することはできませんが、研究と社会とのインタラクションが継続的に発生している評価であると考えています。
本研究所では、これらの実績を更に促進していくことを目指します。経営学の手法をアップデートすることで、新しい産学連携の形を推進し、より多様な研究成果を生み出していきたいと考えています。そのためにも、より多くの企業の皆様と一緒に共同研究を広げていきたいと考えております。共同研究に関心を持って下さる方はぜひお気軽にご連絡いただければと思います。
2024年12月1日
早稲田大学総合研究機構
科学技術とアントレプレナーシップ研究所 所長
牧 兼充